中学古文:和歌(短歌)の修辞法
中学の国語で学習する古典文学において、和歌(短歌)はよく出題される分野です。高校に入学した後は、本格的な古文として、少し長めの文章を学習しますが、中学では比較的短い文章として、有名な古典作品をやや短めに抜粋したような作品のほか、特殊な形態の文章、たとえば和歌(短歌)や俳句などがテストに出題されるケースが多いと思いますし、その傾向は高校入試においても大きく変わらないものと考えてよいと思います。
しかし、和歌(短歌)や俳句などの場合であっても、文の長さが短いから簡単だというわけではなく、独特のルールを知っておかなければ全く解けない問題もあるのがこの分野の特徴です。現代文のように一定の読解力さえあれば文章中から答えを見つけ出せるという類の問題ではないということを知っておいてください。
【和歌(短歌)の修辞法】
○枕詞→文中において、意味がほとんどない語だが、ある言葉を言い出したりするためにつける語。例えば、「あをによし 奈良の都は・・・」という書き出しではじまる有名な短歌がありますが、このときの、「あをによし」は「奈良」を言いだすためにつける枕詞です。文法的な意味としては、一定の語の上にかかり、和歌独特の七五調を整えるのに用いられたと考えてよいと思います。先ほどあげた「あをによし」のように五音であるのが普通で、「あをによし」以外の枕詞には下記のようなものがあります。
(その他の枕詞の例)
たらちねの |
母 |
ちちのみの |
父 |
草枕 |
旅 |
ちはやぶる |
神 |
ぬばたまの |
夜・黒髪 |
あしひきの |
山 |
ももしきの |
大宮 |
ひさかたの |
天・空・光 |
たまきはる |
命 |
○掛詞→2つの音を持つ一つの語に対して、2つの意味をもたせている語。
例→「花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」
このとき、「ながめ」という語は掛詞として扱われ、「眺め」「長雨」の2つの語として解釈されます。
(問)先ほどの短歌、「ながめ」以外にもう一つ掛詞がありますが、それはどの語句でしょうか。
(答え)「ふる」(「経る」「降る」)
○序詞→ある語句を導き出すための前置きの言葉。枕詞とは混同しないように注意してください。
例→「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜を・・・」
このとき、「ながながし」という語を言うために、「あしびき〜しだり尾」までの長い前置きがあるが、この部分が序詞。
【係り結びの法則】
「や」、「ぞ」、「こそ」などが上にくると、結びの述語の活用は、終止形以外の形で結ぶ。例えば、普通なら「けり」という言葉で終わる文であっても、「ぞ」という言葉が上にくれば、文末は「けり」ではなく「ける」になることが一般的になっています。
【和歌(短歌)の調子】
五七調→二句・四句で意味や調子が切れるもの。雰囲気としては重々しく厳かな感じがするとされる。
七五調→三句めで意味や調子が切れるもの。雰囲気としては軽快で優美な感じがするとされる。
※テストで問われる形として、「この短歌は五七調か、それとも七五調か」と問われることがあると思いますが、どうしても意味の切れ目がわからないということがあれば、短歌の内容の雰囲気で判断するというのも良い考え方だろうと思います。